素敵なゆっくりさんと

ご家族インタビュー

第一回目の「素敵なゆっくりさんとご家族インタビュー」。


【前編】ゆっくりさん(発達障がいのある子)を

育てるということ③

【前編】ゆっくりさん(発達障がいのある子)を育てるということ③


キ:薬が効いて長女の夜の癇癪がおさまってきたと思ったら、次男の癇癪が始まったんだったよね…。


く:そう。薬飲んだのに?って思うけど、当時20時に寝て1時とか2時に覚醒するっていう。それでまた8時間ドライブが始まる訳よ。ぎゃーって次男が泣くと、長女も子どもの泣き声がダメだから連動してぎゃーってなる。もう頭を抱えるしかなかった。次男はつい最近まで毎日癇癪があったからねぇ。小学校入る前に急に、2日に1回とか、一週間に1回とか、スパンが長くなって徐々に少なくなったかな。

診断を受けて療育を受けて同時に色んな福祉サービスの利用を受けられるようになって、なんとか生活が回りだしたんよ。そういう手続きも全部一人でやったよ。色んな人に会って、福祉課に行って喋る、保育園のサポート受けるのに子ども課で喋る、保育所でも喋るっていう自分の状況を説明して回らないといけなかった。


キ:息も絶え絶えな中、よくぞ踏ん張ったよ。周囲に助けてほしいと手を伸ばしたから、福祉サービスを受けられるようになったんだね。当時、いちばん助けになったものは?


く:当時の一番の救いは、長男が赤ちゃんのころに知り合ったママ友さんたちだった。買い物を手伝うとかじゃなくて、動けんやろうからってただ会いに来てくれてた。それが本当に嬉しかったんだよねぇ~。子どもがぎゃーっと泣いても、変わらずにいてくれて。「ただお茶をしに行きよっただけやけん」っていまだにそう言ってくれてるのが有難い。それがあったけん、やってこれたかなと思う。

長男のママ友さんはいるけど、双子や末っ子と同じ年のお子さんがいるママ友さんはほとんどいない。というのも、車から降りた瞬間から療育で、車までが療育とされているから、お母さんたちと仲良くなる機会が殆どない。茶話会というのもあるけど年1回くらいだから。あの当時ママ友がこの町におらんかったらどうなってたか分からないし感謝しかないなぁ。

キ:当時をなんとか生き抜けたのは、そういったママ友さんや、療育機関の先生たちのお陰だね。次女のことも聞きたいけどまた次回に・・・。今は、子どもたちの成長も年々感じられるようになってきた?


く:あの癇癪がひどかった長女が今は、パニックが起きても、自分から「休憩したいです」って言えるようになった。2階の自分の部屋のベッドがカームダウン(パニックの状態から落ち着きを取り戻す)の場所なので、タイマーで自分で時間を決めてそれまでに自分でパニックをおさめて下りてこれるようになったんよ。大進歩!癇癪が起きたら「どのくらいで大丈夫そう?5分でおさまりそう?」って聞いたら「はい、5分にします。お母さん、タイマーを押してください」って泣きながらでも言える。

それは療育施設でタイマーなどのスケジュールが信用性の高いものである、という風に彼女にしっかり理解させてもらったから。それで自宅でのモバイルでのスケジュールで動けるようになった。

↑くりっこは、毎朝、長女用のモバイルのスケジュールを準備する。終わったものからはがして、後ろに作っているポケットに入れる。見通しが立たないことが苦手なゆっくりさんにとって、後のスケジュールが分かり安心材料になる。

パニック時に一人にしてあげられたら早くおさまるんだって周りが分かってあげることが一番

く:療育施設の勉強会でも教わったけど、IQが高い自閉症さんほど周囲の目を気にして、本当は癇癪が起きている姿を絶対に人に見せたくないと思ってるらしい。癇癪が起きた後に、「またやってしまった」って、すっごく反省するんだって。だからパニックになった時に、安全な場所で一人にしてあげられたら早くおさまるんだっていうのを周りが分かってあげることが一番かなと。

そのことを本人が「いいな、これが楽だな」と実感したから、トイレにこもったり2階に一人で行ってパニックをおさめられるようになってるんだなと今改めて私も実感してる。それが療育での一番の収穫だったかも。


キ:そうか・・・昔よりは少しずつ子育てが楽になってきてるんだね。でも、当時と同じような状態で苦しんでいるお母さんが今この瞬間にもいるかもしれないね…。

く:その時の大変さってその時でしかないから、将来まで想像できんと思う。この子はどこまで成長してどこまで自分は楽になるんだろうって。当時は、先輩ママさんから「大丈夫よ」とアドバイスをもらったけど、とにかく今困っててどうしようもないし、先が見えなくて、そう言われてもピンと来なかった。それでもやっぱり今同じことを言ってしまうことになるけど、実際そうだったから言える。子どもが大きくなるにつれて、絶対楽になってきますから!大丈夫!!


くりっこの子どもの内、双子の兄妹。一番大変な状況だった2歳頃。